ロベール・ドアノー : 子どもたち

 Kansai Art Beat (JP) のツィートを見て、本棚からロベール・ドアノー(Robert Doisneau)の「子どもたち」という写真集を出してきた。以前、金沢でお散歩スナップしているときに、通りかかったオヨヨ書林で購入した。

 戦争の爪痕がまだ残っていたフランス国内、多分パリやパリ郊外で撮影したものが多いのであろうが、この写真集に収録されている写真に写っている子供たちは、本当に生き生きした表情で一杯だ。ただ単に撮影技術どうこうというものを超越して、心の中にある目で撮っていると思えるほど、本の中から子供たちが、そのまま飛び出してきそうな臨場感がある。
この写真集には、もう一つとても印象的な部分がある。巻頭で、ドアノー自身が語っているエピソードだ。この写真集に載っている写真を見て、写っている被写体の本人達が、ドアノーの家を訪ねてきたという。撮影してから半世紀も経ってからのことだ。

ドアノー「子どもたち」

 

 なんて素敵なことだろうと思った。初老の域に入ってから、自分が幼かったころの自身の姿を、写真集や写真誌の中で見つけて、一気に少年・少女時代に引き戻されてしまったんだろう。


 この写真集に載っている写真が撮られた時代では、どこの家庭にもカメラがあるという状況ではなかっただろうから、過去を懐かしむことが出来る映像は、心の中だけにしかないというのが当たり前だっただろう。その心にしかない筈の過去の朧げな情景が、ドアノーの生き生きとした写真を通して、一気に鮮明なものとして蘇ってきたら、それはきっと衝撃的ともいえるインパクトがあっただろう。僕も、もうあと10年もすると半世紀前の小学校の頃のことを懐かしく振り返るのだろうか?僕の場合、幼少の頃に撮られた写真をまとめたアルバムがある。モノクロとカラーが入り混じった、そういう銀塩写真の時代だ。

 デジカメでもフィルムでも、写真を通して、その時一緒にいた家族と過ごした時間を振り返ることが出来るのは、やっぱり素敵なことではないだろうか。