Leica ( ライカ ) / Leitz のためのデジタイジング

 フィルムをデジタイズする方法は色々ありますが、ライカファンの私が最終的に選んだデジタル化の方法はこれです。Leitz時代のコピースタンド、BEOON 16511の活用です。

 BEOON 16511を是非手に入れたいと思ったのは、LeicaがMONOPAN 50を発売してから。アナログプロセスの方は、手持ちのValoyIIやFocomat IIcなど、Leitz製の引き伸ばし機でプリント出来る。ならば、Leicaブランドのフィルムのデジタイジングも、出来るだけLeica製のツールで実現したいと思った次第。

パーツセット

本来は、Leicaのフィルムカメラで、フィルムのコピーを撮影するためのキット。しかし、特に改造する必要もなくこのセットをそのまま最新のLeica M型(デジタル)と組み合わせてバルナック(Lマウント)またはM型(バヨネットのMマウント)のLeitzまたはLeicaのフィルムカメラで撮った135(35mm)フィルムのデジタイジングを行える嬉しいツールなのだ。

Leitz BEOON 16511: Parts set

機能美

 BEOON 16511は、工芸品のような美しさに満たされている。本体や各マスク、エクステンションリングもレンズ側に取り付けるバヨネット式のMマウントアダプターまでもがFocomat IcやFocomat IIcの最終モデルや1967年発売のLeica M4のようにハンマートーンのコーティングが施されている。ただ、私が購入したセットの場合、135フィルム用のマスクについては、ハンマートーンのマスクと合わせて、私が使用している古いタイプのFocomat IIcと同様に、黒の縮緬状のコーティングが施されているタイプのマスクも同梱されていた。こっちの方がフィルムを固定する時の光の反射の影響をより効果的に防止(?)出来るのではという勝手な思いも….。

 いずれにせよ、ハンマートーンとシルバーの金属色で構成されたこの逸品。見ているだけでも飽きが来ない機能美で満たされている感じがする。

 古い製品なので、ヤフオクやメルカリ等で購入した場合、アダプターが欠品というケースもありえるだろうが、市販のL-Mアダプターを入手すれば問題ない。

LeicaM型デジタルカメラをセット

 BEOON 16511のカメラをセットする土台のマウント部は、バルナックライカのLマウントの仕様。しかし、そこにL-Mマウントアダプターを取り着ければバヨネット式のM型ライカをセット可能。実際、BEOON 16511を購入するとパーツセットの中にアダプターも入っている。最初からM2やM3も使う想定で発売されたのだろう。幸い、最新のLeica M型デジタルカメラも変わらずその同じデザインのバヨネット式のマウントとなっているので、有難いことにこの往年の素晴らしい逸品をフィルムのデジタイズに利用出来る。

L-M adapter for Leica M body
M型ライカを合わせるためにL-Mアダプターを取り付ける。

 手持のLeica M11 Monochromを取り付けてみた。

 バヨネットのマウントでしっかりとホールドされて安定感がある。Mマウントアダプターを介せばニコンやキャノンのミラーレス一眼でも取り付けは可能だと思う。ただこの場合大ぶりである程度重量があるミラーレス機を取り付けると頭でっかちになって、かなりバランスが悪くなると思う。この点M11 Mmonochromは比較的コンパクトでバランスが取りやすいように思えた。

Leitz Leica BEOON 16511 Copy Stand (6)

 Leica製以外のミラーレス一眼などでも、Mマウントアダプターを介せば、BEOONに取り付けることは出来るだろう。しかし、この非常にコンパクトなコピースタンドにあまり重量があるミラーレス一眼のボディを取り付けると頭でっかちでバランスが悪くなりそうだし、取り付け部の根本の部分が重みで少し撓んでしまうかも。このコピースタンドは元々がバルナックライカやM2、M3等を使う想定で設計されたであろうから、やはりデジタイズの目的で使うならM型ライカのデジタルの機種が適当だと思う。M11や私が使っているLeica M11 Monochromは、デジタル機としては軽量だし、そういう意味でもBEOONとのマッチングは非常に良いと思う。

 昨日、Leica Store Kyotoに行った際、発売になったばかりのLeica M EV1があったので触らせて貰った。ボディーサイズは従来のM型のデジタル機と変わらない大きさなので、通常の撮影と並行して、BEOON 16551を使用したフィルムのデジタイジングにもピッタリだと思えた。

Leica M EV1
発売されたばかりの Leica M EV1

各マスクのための高さ調整

 135フィルム用、120用(ブローニー用)などマスクの大きさに合わせてBEOONの高さを変える必要がある。デジタイズした画像に黒縁を付けるか否かによっても高さの微調整が必要。これらの高さ調整は、ネジ切がある支柱のノブを回すことで可能。支柱の背後に目安となるマスクサイズが記されている。

高さ調整は支柱のノブを回して行う。

エクステンションリング

 焦点距離50mmのLeica製LマウントレンズかMマウントレンズを使うのが基本。もちろん、コシナ製のVMマウントレンズを使用することも可能だし、その他Mマウントアダプターを付けた50mmレンズまたは50mmを出せるズームレンズでもイケるかも。しかし、上記のカメラサイズと話と同様であまり大振りのレンズを付けると重みで支持部が撓んで水平をキッチリ保てなくなるかも.....。ズームレンズだとどうしても重くなるのでやはり最初からMマウントかLマウントになってる単焦点50mmレンズを使った方が無難だと思う(特に最初にテストする時)。35mmフィルム用のマスクは、黒縁出しが可能。よって、黒縁を付けた状態でデジタイズするカメラの画面ギリギリ一杯まで入れ込んで撮影する場合と黒縁ナシでフィルムの像をデジタルカメラの画面一杯に入れて撮影する場合とでは、フィルム表面からレンズまでの距離を若干変えねばならない、その時の距離調整のために使えるのがエクステンションリングB、C、Dだ。

Set Extension ring B, C and D
エクステンションリング B, C, Dを本体にセット

 しかし、変則的な使い方をするとこれらのエクステンションリングだけでは調整出来ないこともある。私が行った実例で言えば、Focomat IIc用のFocotar 60mmをデジタイズ用のレンズとして使った場合。焦点距離60mmなら50mmに近いから、BEOONを介してのデジタイズ用のレンズとしてそのまま使えるのではと考えた。実際試してみると、BEOON用のエクステンションリングに50mmのFocotarレンズをFocomat IcやValoyIIに合わせて使う時のオプションであるFit Tube 17675 Xを組み合わせると、黒縁が入らない状態でデジタルカメラの画面一杯にフィルムの像を100%一杯に入れ込むことが出来る....という具合で、合わせるレンズによってBEOONのエクステンションリングだけではフィルム表面からのレンズの距離を適切に調整仕切ることが出来ないこともあり、それでもどうしてもそのレンズで調整仕切りたいという場合は、ピッタリ調整仕切れる長さのオリジナルのエクステンションチューブを3Dプリンターで作るか、加工メーカーに依頼して特注で作ってもらうなどせねばいかんと思う。

Mマウントレンズの取り付け

 ハンマートーン仕上げのLーMマウントアダプタがBEOONに付属している。BEOONのセットにおける定義はエクステンションチューブAだ。これを組み合わせたエクステンションチューブの先端に取り付ければバヨネット式のM型マウントのレンズを取り付けられる。

Extension ring A (L-M adapter for Mount lens )
エクステンションリングA(Mマウントレンズ用L-Mアダプター)
Extension ring A (L-M adapter for Mount lens )
エクステンションリング A をリングDの端部に設置したケース

マグニファイヤの活用

 ↑一番最初のパーツセットの写真中で、右上の方に黒い筒状のものが写っているのがお分かりだろう。これがマグニファイヤ。現代のデジタルカメラの場合は、イメージセンサーが捉えたフィルムの画像をカメラ背面の液晶画面やEVFの画像を見ながらレンズのピントリングを回してピント合わせが可能。しかし、フィルムカメラの時代にBEOONを使ってフィルムのコピーを作成していた時代はそんなことは出来ないので、Mマウントのバヨネットと同じデザインの嵌合部があるこのマグニファイヤをBEOONのカメラをセットする部位に取り付けて、レンズを介してフィルムの画像を見ながらピントリングを回してピント合わせをする。デジタルのM型ライカなら先ほど書いたようなピント合わせが出来るので、このマグニファイアは必要ないだろうと私は思ってしまった。しかし、それが間違いであることに、デジタイズ用のレンズやエクステンションリングをとっかえひっかえしながら各マスク、各レンズでの画角調整やピント合わせの作業をさんざんやった後に気が付いた……。

Magnifier

 普段、デジタルのM型ライカをお使いの方々はここまで書けばお分かりだろう。ニコンやソニー、キャノンのミラーレス一眼ならまだよかったと思う。日本製のミラーレス一眼の場合、セルフクリーニングユニット(超音波で振動させるユニット)が撮像素子に付いた埃などを自動で取り除いてくれる。M型のデジタル機にはそれが搭載されていない。普段、出来るだけ埃が少ない場所でササっと短時間でレンズ交換するようにしていてもセンサーに付着した埃粒は徐々に増えていってしまうくらいなのに、上記のようにBEOONにM型ライカを取り付けた上でエクステンションリングやデジタイジング用のレンズをとっかえひっかえしながら調整するという行為は、M型ライカのフロントキャップを長時間外したままにして

 「埃さん、そちらに漂っているゴミ粒さん達、そんなところにいないでどうぞ私の撮像素子の上にお座りなさい」

 と、手招きしているようなものだ。実際、全ての調整作業が終わって、試しにMONOPAN 50やその他過去にLeica M3で撮ったネガフィルムの画像を拡大してみたら、ゴミ粒のオンパレードだった(ブロワーで払っても全然取り切れないレベル)。しかし、私の場合Leica M11 Monochromを購入して以来この3年近く、レンズ交換をあまりしてこなくてセンサー上のゴミ・埃は気にならないレベルだった。だからまだ一度もセンサークリーニングの依頼をしていなかった。自宅最寄りのLeica Store Kyotoに連絡したら、まだギリギリ延長保証の範囲内ということで、センサークリーニングをお願いした(一回目は無料)。無料でやってもらえる最後の機会直前に散々BEOONの調整をやれてよかったと思うことにする。

 というわけで、いきなりM型のデジタル機をBEOONにセットして調整するのは避けた方がよいというお話。まずは、マグニファイヤをカメラの代わりにBEOONにセットして、それぞれのデジタイズ用のレンズとマスクに合ったエクステンションリングの組み合わせを探って当たりを付けておいて、最終的な調整時にのみカメラを実際にBEOONにセットしてイメージセンサーが捉えた画像でピント調整や画角調整を行なえばM型ライカデジタル機のイメージセンサーに埃が付く割合を相対的に減らせる。

課題

BEOON 16511でデジタイズした事例 (1)

 ブローニーフィルム用のマスクもあるので、私の場合はHasselblad503CXで撮った6X6のフィルムもLeitz BEOON 16511でデジタイズが可能となる。

Put mask on 6X6 film

 だが実際にマスクを使ってみると、両サイドが結構トリミングされてしまう。ある程度トリミングされてしまっても構わない場合は良いが、意図的に黒縁を付けたい時や6X6の像をめい一杯デジタル化したい場合は少々困る。そこで、今後の課題として黒縁を出せる6X6用のマスクを自作したいと思います。まぁ、少し先になると思いますが出来上がったらまたブログ記事にします。

気軽にデジタイズ

 

Leitz Leica BEOON image

 これまで結構色々なデジタイズの方法を使ってきています。フラットベットスキャナーやニコンのデジカメでデジタイズするホルダーやその他2社の製品も。でもLeitz BEOON 16511が1番コンパクト。平日仕事部屋で週末暗室に利用している部屋は色々な機材があって手狭に………。そういう意味でもBEOON 16511は、私にとってデジタイズの救世主のよう。これから大いに活用していきます。