これまでフィルムの多重露光は主に一眼レフカメラ(Canon EOS7s, EOS1V)で楽しんできていて、今回初めてLeica M3にカラーフィルムを入れて多重露光をやってみた。
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Leica M3は多重露光に最適
現像を終えて仕上がってきたフィルムを観て驚いた。 Leica M3は、フィルムで多重露光を行う場合の最適カメラのうちに数えられる。
フィルムの位置決めが正確
フィルムで多重露光を楽しむ場合、24枚撮りであれば、まず24ショット撮る。そしてフィルムを一度巻き戻して、一度撮ったそれぞれのカットに2回目の撮影を行う。その際重要なことは、2度目に撮影する像を1度目の像とピッタリ重ね合わせること。そのためには、最初にフィルムをカメラに装填する時と、巻き戻して2度目、3度目に再度装填するときに、フィルムの先端位置を毎回同じ位置にピッタリと合わせる必要がある。
この点、LeicaM3はフィルム先端部の位置決めがやり易く、かつ重ねた像がズレないようにするためのバックアップ機能が備わっている。
まずは、M3のスプール。↓ご覧の通り、M3のスプールにはフィルムの先端部を固定する部位にスリット状の矢印が付いているので、固定されたフィルム先端の位置を明確に視認出来る。1度目の撮影でフィルムをセットする時も、巻き戻して2回目(あるいは3重露光のための3回目)の撮影を行うときも、フィルムの先端部を完全に同じ位置に固定しやすい。
LeicaM3は、機械式カメラとして最高峰に位置するカメラ。メカニカルな機構にブレがない。フィルムを装填するときには、巻き上げレバー下部にあるスプロケットのピンにパーフォレーションの穴を合わせるのであるが、スプロケットのピンがフィルム装填時にいつも同じ位置に確実に来てくれるので、ピンに合わせるパーフォレーションの穴の位置にマジックで印をつけておけば、1度目の撮影時も2度目の撮影時もピンとパーフォレーションを確実に同じ位置に合わせやすい。これが、スプールにおけるフィルム先端部の位置決めのやり易さに加えて、1度目の撮影を終えてフィルムを一度巻き戻して2回目、3回目のフィルム装填を行い、1回目に撮影した像と2回目、3回目の像がピッタリと重なりあってズレが出ないようにするためのバックアップ機能になり得る。
今回のフィルムは、Traveler’s Factory さんとPhotolabo hibi さんのコラボ企画製品に付いていた24枚撮りのKodakのカラーフィルムを使用し、現像はPhotolabo hibiさんにお願いした。
Photolabo hibiさんから仕上がってきたフィルムを観てビックリ。↓どのカットも一回目に撮った像と二回目に撮った像が、ズレなくほぼ完璧に一致して重なっている。
今までは、Canon EOS7sやEOS1Vでフィルムの多重露光を楽しんできた。こうした現代的なフィルム一眼は、自動巻き上げ式で当然巻き上げレバーがないため、フィルムの穴に合わせる突起部がなく、フィルム先端位置をカメラの内壁面の端に合わせるなどして位置合わせをするんだけど、フィルムの巻きぐせなどが影響して一度フィルムを巻き戻して再度フィルムをセットして2度目、3度目の撮影を行うと、仕上がったフィルム上で微妙に像の重なりがズレていたり、酷いときは重なりが2,3ミリ以上ズレまくって意図した撮影が出来なかったということも何度かあった。特に、一回目の撮影が終わった後、ずっとカメラの中に入れておいて、フィルム先端部にキツイ巻きぐせが付いてしまった時は2,3回目の撮影の時の位置合わせが難しくなることも。1回目の撮影が終わったら、早めに巻き戻してパトローネからフィルム先端部を出しておいた方がよいです。でもまぁ多重露光に慣れてくると、フィルムの巻きぐせの度合いに応じてこうした自動巻き上げ式のカメラの場合でも、位置合わせもトライ&エラーの経験則から調整が出来るようになってきて、完ぺきに像が重なってくるようになる。まぁ、多少のズレはかえって想定外の意外な結果をもたらしてくれることも多々あって、それはそれでとても楽しいと思う。
しかし、初めて多重露光を試してみる人にとっては、むしろLeicaM3のように古い時代のフィルムカメラの方が、スプロケットのピンなどがあって、そこにパーフォレーションの穴を合わせる方式だったりするので、この方が初心者には扱いやすい面があると思う。
3重、4重露光も
今回、Leica M3でフィルムの2重露光を試してみて、フィルム装填時の位置決めがかなりやり易く、各カットで重ねた像をほぼピッタリと合わせやすいことを理解した。
次回は、二重だけと言わず、M3を使った3重または4重露光にも挑戦してみたい。さらに、今回はカラーフィルムでの多重露光を楽しんだけど、モノクロフィルムによる多重露光もドンドンやってみようと思う。
もっと気軽に楽しめるカメラは?
しかし、正直メンテがしっかりとされた状態のよいLeica M3は、フィルムカメラ初心者やちょっと試しにフィルムで多重露光を楽しみたい方々にとっては、お値段が高すぎるということになってしまうと思う。
Canonet QL17 G-III
気軽にフィルムで多重露光を楽しむとなると、LOMOはとても人気。私は別のオプションとして、皆さんに是非お勧めしたいのが、Canonet QL17 G-III。
このカメラには、文字通りQL(フィルムのクイックローディング機構)がついているので、多重露光のために巻き戻したフィルムを2度、3度とカメラに正確に同じ位置にローディングすることを考えると、↓フィルムの先端部をカバーする金具が付いているのCanonet QLなら、フィルム先端部の位置決め作業を正確に行いやすい。このカメラのお値段、キチンとメンテされた状態で販売されているものでも、Leica M3に比べらたら遥かに安いです。実際の販売価格は、カメラの状態とお店によるけど、2〜4万円で購入可。ヤフオクやメルカリでもCannonet QL17 G-IIIが結構出品されていて1万円以下でも購入が出来ますが、お値段が安い分レンズが痛んでいたりグリースが固着しいたりとかするので、購入後は機械式カメラのメンテに精通したお店に出して修理・メンテを依頼した方がよいです。
Cannonet QL17 G-IIIをお勧めする理由がもう一つ。赤城耕一先生のウケウリですが、レンズの性能がよいです。
今のカメラはカメラ開発時に電子制御部品に配分する研究開発費の割合が高い。一方、Cannnonet QL17 G-IIIが開発された時代は、キャノンさんもニコンさんも電子制御部品に配分するべきコストが掛からなかった分、カメラのレンズに注ぎ込む開発費の割合が高かった。なので古いカメラではありますが、F1.7という開発当時としてはとても明るいハイ・スピード・レンズがこの大衆向けカメラに付いています。さらに軽くてコンパクトなので、私の場合は多重露光を楽しむだけではなく、仕事カバンに忍ばせておいて、仕事の後で帰宅する道すがら撮ったり、出張先で晩飯の後に撮ったりしています。F1.7という明るいレンズが付いているので比較的光源が多い繁華街などであれば、夜間でもストロボなしで撮影を結構楽しめます。
多彩な日本製レンジファインダー機
日本のカメラ業界がレンジファインダー機から一眼レフ機の開発・生産に移行しようとしていた時期の大衆向けコンパクトカメラには、お値段の割に贅沢なハイスピードレンズが付いていて、しかもデザインが可愛らしいものも結構あります。この辺りは赤城耕一さんの数々の著作が大変参考になります。たとえば、「フィルムカメラ放蕩記」(HOBBY JAPAN)を読んでいると、ミノルタAL-Eとかヤシカエレクトロ35MCなんかも是非多重露光で使ってみたいという気持ちになってきます。中古カメラ店で見つけるとついつい足が止まるんだけど、Leica M11 Monochromeがリリースされたら即買いしたいと思っている今の私はグッと我慢です(笑)。