大石芳野さんの写真展

「それでも笑みを」ー Leica Gallery Kyoto

 同じ京都市内。京都の下京区から東山区に引っ越した。大好きな鴨川べり、建仁寺や八坂の塔がご近所になった。

 引越しが終わってからバタバタだったがそれも一段落し、今まで住んでいた京町家も先日売れて、先日手付金を受け取り、来月引き渡しという段取りも決まり、心のゆとりが生まれてきた。

 昨日は仕事のあとにNikon Z7IIを持って、お散歩スナップしながら花見小路のLeica Gallery Kyotoに向かった。「それでも笑みを」というタイトルの大石芳野さんの写真展を観に行くため。

大石芳野さんの「それでも笑みを」
大石芳野さんの「それでも笑みを」

 今から12年くらい前だろうか。戦争の爪痕が残る現場で必死に悲しみを堪えてたくましく生きようとする現地の親子や子供たちの写真をカメラ雑誌で見て、どこの国の従軍カメラマンが撮ったのだろうと思っていたら、後日、華奢な女性の写真家がライカを手にしてインタビューをうけている記事をみて、その女性、大石芳野さんが撮った作品だと知って驚愕した。決して治安はよくない筈、それでもその現状をライカで撮り、悲惨な戦争の実情を、むごたらしい現実をそのまま写実的に写しとるのではなく、避難所や現場に残された遺族の表情の裏側にある感情を露わにしプリントを通して世界に伝えたい。そんな大石さんの写真を撮るプロとしての力強さを感じた。

 その大石さんのプリントを生で見られるなんてなんて贅沢。印象に残ったのは、2枚の写真。イランの市場の丸天井から差し込む光によって、父親を待つ少女が包み込まれ穏やかな表情でいる様子をとらえたもの。もう一枚は、目の前で父親をセルビア武装勢力により撃ち殺されたコソボのヴァルドゥリ君(9歳)。2枚は非常に対象的。少女はすでに父との別れからある程度立ち直っているのか、あるいは戦場にいる父親と再会出来るのを楽しんに待っているのか表情が穏やか。一方、ヴァルドゥリ君はあまりにもショックが大きすぎ、時間が経った学校の教室でも涙が止まらないでいるのかそのほほを伝う表情に苦悩と悲しみが満ち満ちている。どちらの写真も家族を不幸に追いやる戦争は決して起こしてはいけないし、でも戦争の悲惨な状況は、現実今この瞬間にも平和な日本から遠くはなれた地に存在するということを実感させられる。

 大石さんの作品は、また是非関西のギャラリーで展示会がある度に是非拝見したい。