Pilgrimage II by Shin Sugino

杉野信也 写真展

Pilgrimage II 巡礼II

Leica as Plenary Indulgence 免罪符としてのライカ

2022.5.14(Sat)〜8.18(Thu) 11:00 〜 19:00

ライカギャラリー京都 Leica Gallery Kyoto | 月曜日定休 Closed on Mondays | 入場無料 Admission free

帰る途中に

 仕事帰りに京都河原町駅から自宅に帰る途中、花見小路はいつも通る。でも、私が帰る頃にはいつもLeica Gallery Kyotoはすでに閉まっていることが多い。

 杉野さんの展示会は、5月から開催されていたので観に行きたいと思いつつも週末はなんやかんや用事があってなかなか行けずにいたが、昨日鍵善良房本店にてくづ切りを頂いた帰りにようやく拝見することが出来た。

杉野さんのプロフィール

 大阪生まれで19歳でカナダに移住。ライアソン大学で写真、映画を専攻。ヨーク大学美術部の講師を務めながら写真作家の活動をスタート。’86年、Sugino Studioを創設。写真、テレビCMディレクター、撮影監督など幅広く活躍。’88年、’02年にカンヌ国際広告映画祭で金獅子賞、’06年に同広告映画祭サイバー部門で金獅子賞を受賞。その他現在に至るまで数々の賞を受賞。

シルバーフォトグラビュール技法

 Leica Store JapanのWebサイトにあるMy Leica Storyに杉野さんのインタビュー記事が2回に渡って掲載されている。その中で、今回のPilgrimageの一連の作品づくりに適用されている技法について解説されている。

 実際に昨日作品を拝見した時、最初遠目に拝見して最初は普通の銀塩写真かなぁと思ったのであるが、作品に近づいて明部の感じ普段自分がバライタ紙に焼き込んだ場合と全然違っているのに気が付いた。明部に独特の鈍い輝きがあって凹凸感があった。そこに興味を惹かれて、これはどういう技法で作り込まれているのかと思い、まずは展示会場にあったプレートの解説に、現代的なデジタル技術とフォトグラビュールを融合させたような技術であるとのことだが今一つ、ピン来なかった。それで先ほどのLeicaのサイトに行ってみて杉野さんのインタビュー記事を拝見して合点がいった。

 ここで言われている古典的なフォトグラビュールは、Cameraholics(ホビージャパン)創刊号の124〜127ページで紹介されている技法、エリオグラビュール(Héliogravure)に相当すると理解した。スティーグリッツなどが行った伝統的なこの技法の場合、銅板を薬品で処理してインクを載せる凹凸を形成させるが、そのプロセスにおける銅板を、杉野さんの場合はスチール板とその上にのせた樹脂で代替している。その樹脂がUV(紫外線)で硬化する機能を利用しているという。UV硬化性樹脂の平面上にインクジェットでプリントすることで、プリントされたインクがのっている分部はUVで硬化されないから、UV照射した後から樹脂を洗い流して取り除ける….。なるほどうまく考えたものだ。現代版エリオグラビュールとも言えるべき手法だ。私の場合、普段仕事で樹脂の硬化反応は全く別の目的で使用することにおいて結構頻繁に目にすることが多いのであるが、芸術作品の創作方法としてこういう使い方があるとは…..非常に興味深いです。

 さらに杉野さんの技法でもう一つ特徴的なのは、刷る際に使用する紙。雁皮紙にニスをかけてさらに銀箔を裏打ちちされているそうだ。こうすることで写真の明部に品の良いまさに燻し銀というべきか、渋みのある独特なシルバーの風合いが出てきていた。

 杉野さんの作品はまだ暫くLeica Gallery Kyotoで拝見出来るので、祇園祭を楽しみつつ、また観に行かせて頂くつもりである。

癒しの空間

 Leica Gallery Kyotoは京町家づくりの建物としてのLeica Store Kyotoの2階にある。Leicaのオーナーでなくても利用出来る。昨日は、杉野さんの作品を拝見した後、Galleryにある大きなテーブルでMagnumや福山さんの写真集を眺めていた。私にとっては、家の近くにある休日の癒しの空間。これからも色々な写真を鑑賞しつつ、写真集も楽しませて頂こうと思います。