傷ついたLeica純正レリーズボタンの修復

不運な事故からオリジナリティがあるレリーズボタンに

 3年前の秋、金沢の浅野川べりで、Leica M3にライカ純正のクローム(シルバー)色のレリーズボタンを付けて撮影していた時だった。シャッターを切って指を離した瞬間にレリーズボタンが外れたことに気が付かぬまま、それが歩き出して靴を地面につけるタイミングでもあったため、靴底と路面の間に落ちたレリーズボタンが挟まって、それに気が付かないまま足を踏み込んだため、その瞬間にレリーズボタン表面と路面との間で、一瞬

「ギリギリッ、グリッ!」

 と、踵の裏あたりに異物感があったのと同時にすごく嫌な音がした。そういえば、撮影前にレリーズボタンが緩みなくシャッターにねじ込まれていることをキチンと確認しなかったなぁと思ったが…..、それは後の祭り。もし靴底に挟まったレリーズボタンが上を向いていれば、Leicaのロゴが入った面がゴムの靴底面側に接するので、さほど大きな損傷はなかったかもしれない。だが運が悪いことに、現実にはロゴが入った面が地面側に向いた状態で、踵に体重が載っている状態でギリギリっといってしまったので最悪な結果に……。

 残念ながら、ソフトレリーズのロゴが入った面は硬い粗れた路面にギリギリと擦り付けられるような状態だったため、見るも無惨な状態となった。Leicaのロゴとその周辺において全面的に深い傷が縦方向、横方向だけでなく、斜めの方向にまで入ってしまい、”Leica”の黒い塗装面も途中で寸断されるような形で結構剥げ落ちた。

 あまりに傷だらけなので、ちょっとこれはもう使い続けるのも辛いなぁ〜と思いながらも、購入して10年以上使っている結構愛着のあるソフトレリーズでもあったので、捨てることは当然出来ず……でも、やっぱりあまりに傷だらけのその姿は痛々しく、自宅のケースに戻して仕舞い込んでいた。

きっかけは、アルミ板のヘアライン加工

 アルミサッシなどでも長手方向と平行に表面に筋がついている場合がある。DIYで、クロムメッキした表面にヘアラインを入れて加工しようと、酸化アルミ粒子サイズが異なる120番手くらいから400番手くらいまで、コーナン・オリジナルの各種スポン研磨シートを色々と試しながら加工作業をやっている時に、

「そうだ、最初は400番手で擦って深い傷を出来るだけ浅く目立たなくして、最終的に120番手に向かって番手を小さくしながら擦っていけば、あのソフトレリーズの傷はなんとかなるかも」

と思い立ち、長いこと仕舞い込んでいた傷だらけのレリーズボタンを引っ張り出してきて早速試した。↓この写真は400番手でじっくりゆっくりと長い時間擦りつづけてなんとか最も深い傷がまだ少し表面上に残るくらいまできた時の表面状態。ここまできて、ライカ純正のLeicaのゴロ入りソフトレリーズの場合、クロムメッキをかけてある下側のベースが真鍮であることが分かった。確かに、小さなレリーズでも少し重量感があるのは、比重が比較的大きい真鍮基材だったからだ。

 400番手のスポンジ研磨シートで擦り続けて、Leicaの文字周辺の大きな傷はほとんど目立たなくなったか、”Leica”の文字そのものの黒色塗装の剥げ具合が気になった。黒い塗装が剥げた部分を黒い塗料で埋めたいと考えた。そこで以前、球面ズミルックス用のレンズフードを自作した時に使った黒色の塗料の残りがあったことを思い出して、それをレリーズの表面に塗り付けて乾かした↓

 この適当に塗料を塗ったような状態から、先ほどのスポンジ研磨シートを使って、塗料を徐々に落として、Leicaの文字が刻まれた溝に入り込んだ塗面だけが残るようになるまで磨き続けて、文字が浮き出るようにした。そしてさらにクロムめっき層をスポンジ研磨シートで擦って更に薄くして真鍮の下地がより出るようにして、自分の好みのレベルで表面光沢とクロム層のバランスがとれるようになるまで番手の小さい研磨スポンジシートで磨き込んで出来上がったのが↓この状態。

 表面にまだ少しクロム層が残っているところで、敢えて研磨を終えた。真鍮の黄金色が主体になりながらもクロムの残留層によって少し燻んで見える部分を敢えて残した。そして、Leicaの文字は、新しい塗料を文字の溝の中に入れ込んだが、一部が依然として剥げたまま。おそらく新しい塗料を塗る前に脱脂処理しなかったことと、オリジナルの塗料も残っている上から新しい塗料を載せたので、キチンと金属面に密着せずに、スポンジ研磨シートで擦り続けている間に新しい塗料の一部が剥がれてしまったものと思う。この状態を見て、一瞬もう一度塗り直す作業をやろうかとも思ったが、やっぱりやめた。文字の塗装が一部剥げたまま残して、尚且つ燻んで見えるクロムの残留層があるおかげて、磨いたばかりなのに、少しレトロ感がある風合いが醸し出されているようで、個人的にこの雰囲気が気に入ったから。

 たぶん、レリーズボタンを使っている間に、真鍮が露出している部分は、現在の磨き立てで輝きを放つ黄金色から、徐々に表面が酸化していき飴色っぽい感じに変わっていくだろうなと思う。そういった変化を試しめるのも真鍮のよいところだと思う。そうやって酸化していく過程で、やはりクロム残留層はもう少し削りたいということになるかもれないが、それは実際に酸化が進む過程で表面外観がどのように変化していくか、その景色の変わり様を眺めながらどうするか検討したいと思う。

M3からM11Mへ

 このレリーズボタンは、クロム色だったのでもともとはLeica M3のシャッターボタンに取り付けるために購入した。今回表面の傷を出来るだけ取り去って磨き上げた後は、真鍮の黄金色が目立つので、やはり黒ボディのカメラの方がより一層マッチングするように感じた。私の手持ちのライカで黒色はLeica M11 Monochromなので、今後はこの黒色ボディに合わせて使って行こうと思う。