Leica初の135(35mm)モノクロフィルム:MONOPAN 50

 Leica Camera AGが、MONOPAN 50と称したモノクロフィルムを発売すると発表した。日本国内のカメラメーカーで今もフィルムを販売しているのは、FUJIFILMのみ。ネオパンアクロス100IIだ。だが、このフィルムは実際にはILFORD UKに製造委託している。委託とはいえ、デジタルカメラでさえもスマホに需要をとられているこの時代に自社ブランドのフィルムを残してくれていることは有難い限りで頭が下がる思いだ。フィルムとデジタルを両方とも存分に楽しめるは、もう私の世代が最後なのではと思っていたこのタイミングで、Leica Camera AGが驚きかつ嬉しい発表をしてくれた。

なぜ今モノクロフィルムを発売する?

 Leitzの時代にLeica Iが発表されたのは1925年。今年はそれから100周年というLeica Camera AGにとっては記念すべき年。このタイミングでのMONOPAN 50はその記念モデルとも言えるのかもしれない。ネット検索してみると様々なメディアがこのフィルムについて報じていることが分かる。それらの情報から、MONOPAN 50が実際にはドイツADOX社のHR-50というスーパーパンクロマティック35mmフィルムと同じものである可能性が高いことを理解した。要するにODM又はOEM供給の可能性があるということだ。

 たとえADOX社からLeica Camera AGに供給されるにしても、2011年に購入したLeica M3で今も趣味としてフィルム撮影を楽しんでいる一ライカファンとしては、Leicaブランドのフィルムが発売されることになるのだから、これほど嬉しいニュースはない。

 Leica Camera AGは、今現在もフィルムカメラ3機種[ M6, MA(TYP 127), MP ]の販売を続けている。昨今、フィルムの価格はどんどん値上がりしている。だから100周年を機に自社ブランドで.....とも勝手に推察。そういう理由もあるのかもしれないが、そのために態々今この時点でライカブランドのフィルムを出すとは思えないと個人的には思った。そんなことを考えているうちに、定期購読しているLFI (Leica Fotographie International ) の最新号が空輸便で手元に届いた。

LFIの記事にみるフィルム写真文化の今

 LFI ( Leica Fotografie International ) 2025年5月号の100ページに、

ANALOG LIFESTYLE, UNESCO : LIST OF INTANGIBLE CULTURAL HERITAGE

という記事があった。 日本でもこれまでデジタルカメラしか使ったことがなかった人たちが、フィルムに興味を持つようになってきた面があるが、この記事を読んでそれが世界的なトレンドになってきていることを理解した。ライカの写真誌でこのようなタイトルが付いて、アナログ写真をお金がある裕福な人の趣味に留めおかずに、若い世代にももっと楽しんでもらいたいという思いも伝わってきて、デジタルとは異なる(或いはデジタルと合わせてハイブリッドで楽しめる)アナログでの写真を作り込むプロセスとそれが生み出す写真芸術を後世にしっかりと伝えていくべきという思いが凄く伝わってくる記事の内容を見るにつけ、今回のライカによる35mmフィルムの発売は、ただ単に商業目的だけではないのだろうと、個人的にはそう思えた。Leica M3をずっと使い続けていて実感するは、撮る楽しみがずっと続くこと。壊れにくい(壊れても修理してもらえる)ということも素晴らしいことだけど、とにかく理屈抜きで撮るという行為が楽しくなる。

 ライカブランドともなるとMONOPAN 50の販売価格は、またかなりよいお値段になるのではと一瞬思ったが、そうでもなさそうだ。日本だとドイツからの搬送費や色々なコミッション含めると相当なお値段になるだろうとも思ったが、36枚取りで税込み2000円はしないようだ。フジフィルムのネオパンアクロス100IIは、英国製造ということで、円安の影響もあってか日本のカメラ店での店頭価格は2000円を軽く上回るお値段。ただ単に自社のフィルムカメラと一緒に使って欲しいということではなく、やはり今後もフィルム文化を継承していくという意味での担い手としての思いも感じるは私だけだろうか?

私個人的なMONOPAN50への思い

 繰り返しになるが、とにかく理屈抜きで嬉しい。2011年にLeica M3を購入して以来、すっかりLeicaに魅了され続けている。そして私にとってのデジタルのLeicaはM11 Monochrom。MONOPAN 50の発売によって、Leicaのカメラでフィルムもデジタルも、両方より一層楽しめる気がする。

 ライカ史上初となるモノクロフィルムが、今このタイミングで発売されることが個人的に非常に嬉しい主な理由は三つ;

能登半島地震

 あの地震が起きた瞬間、私は金沢市内にいた。幼稚園から中学校を卒業する頃まで、毎年夏休みになると従兄弟と私ら兄弟を叔父が車に乗せて、金沢から能登半島の沿岸部を沿うようにぐるっと一周する旅に何度か連れて行ってくれた。能登半島の沿岸部は砂浜あり、岩場あり、港ありと、非常に変化に富んだ風光明媚なシーンの連続。ちょっと走ってはストップオーバーして磯場で蟹や貝をとったり、お寺に寄ってお参りしたり、小さな港の岸壁で皆で釣り糸を垂れたり……そんな、子供の頃の思い出が一杯詰まった能登半島が、ズタズタに引き裂かれたような画像が戻った金沢市内のホテルの部屋のテレビ画面に何度も連続して写し出されるのを見た。あの時の正月三箇日は、ただひたすらにテレビ画面の画像を見続けた。その後から写欲が全く湧かない状態が結構長く続いた。新しい三脚を買ってみたり、カメラアクセサリーを買ったりはするもののほとんでカメラのシャッターは切れずにいた。その状態が少しずつ変わったのは、やはり能登半島の人々が力強く復興に向かおうとする姿だ。

 仕事や以下の病気のこともあって、十分に準備してからでないと無理だが、またカメラを持って能登半島各地を巡りながら沢山とりたいという気持ちが湧いてきている。

二度の入院をのり越えて

 今年に入って2度入院した。28歳の時に病気になって入院したことがあったが、それ以外これまで大きな病気になったことはなかった。しかし、60歳を目前にしてちょっとガタがきた部分が二か所ほど。仕事も継続できるレベルの日常生活には戻れたものの、いずれも完治となならず、この先これらの病気とは長く付き合っていかねばならない。週末に撮る楽しさがあるからこそ、頑張れる気がする。

ライカで銀塩プロセスを

 MONOPAN 50が手に入ったら、先ずは近所で撮ってフィルムスキャンしてモニターやスマホの画面で写真を観てみたい。ここまでは手軽に出来るので是非若い皆さんも是非楽しんでもらって、そこから更に機会あれば実際のプリントも試してみてもらいたい。私の場合は自宅で楽しむ方法として、

フィルム現像→フィルムスキャン→モニターで鑑賞またはインクジェットプリンターで出力

というやり方だけではなく

フィルム現像→ライツ時代の引伸機でバライタ紙(またはRC紙)にプリント

という完全なる銀塩ウェットプロセスでもイケる。デジタルカメラで撮ってインクジェットでプリントまたはプロラボにプリントを依頼するというのが今の写真作品作りの一般的な方法。こういう時代になったのに、私の家では銀塩プロセス用の暗室を維持し続けているし、Leitz時代の引き伸ばし機である

引伸機
  • Focomat Ic
  • Focomat IIc
  • Valoy II

が暗室にある。イーゼルも最近ネットオークションサイトでLeitz時代のものが1台手に入った。10年以上掛かってやっとここまで揃え、完治には至っていないものの、今は日常生活には支障が全くないレベルまで回復したので、そろそろまたデジタルだけではなくフィルムでも楽しみたいと思っていたところで、ライカブランドのモノクロフィルム発売のニュースが飛び込んできた。もうフィルムは手に入り難くなるばかりだろうと思ってもいたので、猶更のこと嬉しいニュース。せっかくここまでLeitz時代の引伸機も自宅暗室に揃えることが出来たし、カメラもフィルムも合わせて、オールライカで銀塩プロセスをこれからじっくりと楽しんでいきたい。

ADOX HR-50でテスト撮影

 Leica Chamera AGが8月に発売するMONOPAN 50はISO50。これまで私が使ったことがあるモノクロフィルムは、

使用したことがあるフィルム
  • Kodak TRI-X
  • Kodak T-MAX 400
  • ILFORD Delta 100 Professional
  • ILFORD Delta 400 Professional
  • FUJI NEOPAN Acros 100
  • Berger Pancro 400

 ISO 50という低感度フィルムも、そしてスーパーパンクロマティックというフィルムも使ったことがない。それならばということで、MONOPAN50が発売される前に、ADOX HR-50(ISO50パンクロマティック・フィルム)で撮るとどういう感じになるのか試してみることにした。

Leica M3 with ADOX HR-50 and HR-DEV.

ADOX HR-50:テスト撮影結果

 夏の日差しが非常に強烈な環境下でテスト撮影してみた。

現像条件 ISO50 22℃(1+49)11分

ADOX推奨のISO50のフィルム現像条件でまずは試してみた。

モノクロフィルム用のフィルター種
  • MC-Y2
  • MC-YA2
  • MC-R2

を装着した場合としない場合での比較。

これまでILFORD Delta 400 Proを中心に撮影してきた私にとっては、それと比較するとかなりピーキーでコントラストが強い印象。

フィルムスキャンする時の条件は全て同一とした。フィルター無しの画像は1段耀過ぎる感があるが、ここから暗い目の設定にしてしまうと、特にMC-R2フィルター装着時の画像がかなり黒潰れしたように見えてしまうため、あえてフィルター無しの画像はすこし明る過ぎるレベルにそれを基準に各フィルター装着時の比較が出来るようにした。

MC-R2フィルター装着時は、+3EV設定にした方がよかったかと….。

  

ADOX HR-50 : フィルター無しで撮影 (±0EV)
フィルター無し (±0EV)
ADOX HR-50 : MC-Y2フィルター装着 (+1EV)
MC-Y2 (イエロー) フィルター装着 (+1EV)
ADOX HR-50 : MC-YA2フィルター装着 (+2EV)
MC-YA2 (オレンジ) フィルター装着 (+2EV)
ADOX HR-50 : MC-YA2フィルター装着 (+2EV)
MC-R2 (レッド) フィルター装着 (+2EV)

現像条件 ISO40 20℃(1+49)12分

同じ日に撮ったのではないので、単純比較は出来ないものの、何も加工していないフィルムを素のままスキャンした状態で比較した結果としては、個人的には少しフラットになったこっちの方が好み。ここからスキャンした画像をレタッチする場合でも、Focomat でバライタ紙に焼く時にマルチグレードフィルターを使うにせよこっちの条件の方が扱いやすそう。

フィルター無し ±0EV
フィルター無し ±0EV
MC-Y2 (イエロー)フィルター装着  ±0EV
MC-Y2 (イエロー)フィルター装着  ±0EV

MC-Y2フィルター装着時は、+1EVにするべきだったろう。

MC-YA2 (オレンジ)フィルター装着 +1EV
MC-YA2 (オレンジ)フィルター装着 +1EV
MC-R2 (レッド) フィルター装着 +2EV
MC-R2 (レッド) フィルター装着

もちろん、まだたった一回比較しただけ。もっと色々な光の状態で撮って、それぞれ現像条件や現像薬品を変えてみて自分好みの条件を見つけていきたい。

ADOX HR-DEV 作例

 テスト撮影終了後、余ったフィルムでちょっと鴨川べりで撮ってみたのがこちら↓

Shooting example of ADOX HR-50 with Leica M3 and ADOX HR-DEV (2)
ADOX HR-50 with Leica M3 and ADOX HR-DEV (1)
Shooting example of ADOX HR-50 with Leica M3 and ADOX HR-DEV (1)
ADOX HR-50 with Leica M3 and ADOX HR-DEV (2)

待ち遠しい発売日

MONOPAN 50が発売になって日本でも手に入るようになったら、とりあえず10本ほと購入し、ドンドンLeicaM3でとってみたい。この記事の作成には間に合わなかったが、R72フィルターを装着してこのフィルムで撮った場合にどのような仕上がりになるかも楽しみ。兎に角、Leica初のフィルムで色々撮ってみたい。楽しみである。


その後の状況

 この記事を書いた後の状況をお伝えします。

 MONOPAN 50をLeica Store Kyotoで初めて入手。4本セットでした。この4本特性曲線作りを開始。’25年10月21日の記事に初めて特性曲線を作成した時の状況をを記しています。

  10月27日に、Leitz時代のコピースタンド( BEOON 16511 )をネガフィルムのデジタイズに使用開始したことを伝える記事を投稿しました。この記事の最後に、このコピースタンドにLeica M11 Monochromをセットした様子をLeica MP(0.85)+上記MONOPAN 50の4本のあまりで撮り、BEOON 16511+Leica M11 Monochromでデジタイズした画像サンプルを掲載しております。

 そして、’25年11月1日に追加でお願いしていたMONOPAN 50を4本更に入手。この4本も更なる特性曲線の微調整(異なる現像薬品や現像処方でテスト)で殆ど消費してしまうかも。

 この追加で到着した4本に加えて、さらに8本MONOPAN 50をLeica Store Kyotoにオーダーしましたが....さて、次に手元に届くのはいつになるでしょうか?