Ulanzi Zero Y : 機動性を損なわない持ち運び方

 Leica Mシリーズのために購入したトラベラー三脚: Ulanzi Zero Y。非常にコンパクト・軽量で尚且つアルカスイスの雲台が非常に使いやすいので、購入後は風景撮影からご近所スナップまで、頻繁に持ち出すようになったのだが、リュクタイプではないメッセンジャータイプなどの比較的コンパクトなショルダーバックと一緒に持ち歩く時には、三脚ケースに入れた上で手で持ち歩くことになり、シャッターを切る時以外、撮影時には出来るだけハンズフリーにした方が何かと便利なので、この持ち歩き方は避けたい。三脚ケースにストラップを付けてバッグと一緒に襷掛けにして持ち歩くことも出来るが、なんかこうシックリこない。

大文字山に上って、Leica M11 MonchromとUlanzi Zero Yで撮影を楽しんだ。
京都は大文字山の火床 
Leica M11 Monochrom + Ulanzi Zero Y

 そこで、その持ち運び方に一工夫することを考えてみた。折角機動性に優れたカメラと三脚が手に入ったので、Ulanzi Zero Yをササッと取り出して設置して、撮影が終了したら短時間で撤収して、次の撮影地に向かうという機動性を考慮した携行方法を模索した結果をレポートする。

機動性を求めて

 購入してしばらくの間、せっかくコンパクトなこの三脚をメッセンジャータイプのカメラバックと一緒に持ち出す時に、なんとか三脚ケースをカメラバッグにワンタッチで取り付けてハンズフリーで移動出来るようにしたいと考えていた。三脚がすっぽり入るような大きめのカバンを新たに購入することも考えたが、ご近所に撮りに行く時に大きめのバックを持ち歩くのはちょっと….。

Ulanzi Zero Y (2)

アイディア出し

  私が長年愛用しているGITZOのメッセンジャーバックは各種収納用のスペースやファスナー構成が秀逸で、比較的コンパクトなバックなのにトラベラー三脚を収納する専用スペースも設けられている。以前書いた記事で紹介したように、このスペースにはUlanzi Zero Yを純正の三脚ケースに入れた状態で収納可能だ。だが、正直かなりキッツキツ。泊まりがけの長距離移動の時などにずっとこの収納スペースに入れたままにするだけなら、これでこと足りる。だが咄嗟に三脚を使いたい時にサッと取り出して、撮り終わったら再び直ぐに収納して即移動という場合、これでは機動性に欠ける。

GITZOのメッセンジャーカメラバック
バッグの三脚収納スペースに入れてみたところ。
かなり窮屈。

 なんかよい方法がないかなぁ〜と思いを巡らしていたのだが、ようやくアイディアが浮かんだ。切欠は、純正の三脚ケース両端にあるリング状の締結部位だ。本来は、純正のストラップを取り付けるためのものだが、二つの締結用リングの幅が丁度メッセンジャーバックの幅と同じくらい。となれば、バックの両側に小さなカラビナ等を付ければ、ワンタッチでUlanzi Zero Yを収納した純正のケースを取り付けられるように思えた。

締結方法

 最初は、金属製のカラビナで三脚ケースの両端とバッグ両端のショルダーストラップの付け根にある金属リングを直接締結することを考えた。しかしこの場合、ショルダーストラップ側は、歩く時の動きによって、金属のカラビナと同じく金属リングが擦れ合って削れてしまい、金属粉が発生する可能性が高いと思った。実際にそうなれば、削れたカラビナは直ぐに新品に交換出来ても、ショルダーストラップの金属リングはそうはいかない。交換不可能な金属リングが削れないようにするため、もう一工夫する必要が出てきた。

  • 金属リングやカラビナの表面が削れないようにする。
  • カラビナと金属リングを繋げてスムーズかつフレキシブルに動くようにする。

 この二つの条件を前提に考えたときに、頭に浮かんだのは「自己潤滑性能」がある素材。要するに、潤滑油などを付けなくても、擦れ合う部位でずっと使い続けても摩耗し難くく、削れカスも出難いという材料。しかも安く手に入るものとなると、行きついた答えはポリアミド(ナイロン)だった。普段仕事で樹脂素材を扱うことが多いのでこういう時は適切な素材を選定しやすい。ポリアミドで出来ていて、締結に使えるもの。そうなると最終回答は自然に出てきた。結束バンドだ。早速ダイソーに行って購入したのが、↓こちらの結束バンドだ。

ダイソーで購入した結束バンド
ダイソーで購入した結束バンド

 ご覧の通り、結構細い。もっと太い結束バンドもあるけど、Ulanzi Zero Yは軽いのでこの太さの結束バンドをリング状にしたものを2個使って締結すれば耐久性は全く問題ないと考えた。コスト要求が厳しい結束バンド用のナイロン素材となると、ほぼ間違いなくPA6だろう。PA6は、女性のストッキング素材としてよく知られているが、ターボエンジンを搭載した車の吸気用のエアダクトなどにも使われている。連続使用温度で100℃を上回るような耐熱要求の下で使われる素材なので、夏は暑いと言ってもターボ車のエンジンルーム内の温度に比して、PA6にとっては何も問題がない使用環境だ。

 ナイロンにはもう一つ大きな利点がある。疲労強度が高いことだ。三脚が入ったケースを、結束バンドで作った樹脂リング経由でカメラバックに取り付けた状態で歩行すると、樹脂リングには、歩くことで発生する上下左右方向の周期的なストレスが必ず加わる筈。ストレスの付加と緩和が周期的に繰り返される使用環境に耐える樹脂は意外と少ない。長期間使う前提でこのような使い方をする部位では、ポリエチレンやポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などは適切ではない。先ほど説明した通り、ポリアミド6は長年ターボチャージャー搭載の自動車用エアダクトで使われている実績がある。エアダクトには、走行中にエンジンの振動が伝わってくるだけではなく、エンジンの吸排気バルブの動きに連動して発生する脈動(空気の正圧と負圧が一定サイクルで加わる現象)というストレスをもずっと受け続けている。ただ単にエンジンに空気を送るダクトでしょと言うことなかれ。PA6は、思いのほか厳しい使用環境にも耐えてくれるのである。

 というわけで、ポリアミドで出来た結束バンドであれば、見た目かなり細い華奢に見える状態でも、三脚ケースをカメラバックに取り付ける締結部品として非常に長期間使用しても十分に耐えると確信するのである。まぁ〜、ダイソーで安く購入した結束バンドは100本入り。もしずっと使って痛んできても直ぐに取り換えられる予備のバンドが沢山あるという安心感もある。

結束バンドの欠点を補う:リングサイズを固定

 結束バンドの場合、一旦ある一定の大きさまでリング状に絞り込んでしまった後、もう少し大きいサイズのリング形状に戻すということは出来ない。よって、カメラバックに三脚ケースを取り付けるのに丁度良い塩梅のリングサイズに調整した後は、結束バンドのヒンジ部を接着でで固定して、リングサイズが小さくならないように固定した。

使用レポート

 ポリアミド製の結束バンドと同じくダイソーで購入した小さなカラビナを組み合わせて、メッセンジャータイプのカメラバックにUlanzi Zero Y用のメーカー純正カメラケースを取り付けてみた。取り付けるカバンや取付位置によってはカラビナはもっと大きくしたいという人もいるだろう。使うバッグの大きさや取り付けたい位置、デザイン性等を考慮して自分の好みのサイズを選べばよいと思う。

カメラバッグ+樹脂リング+HEROCLIP+三脚ケース
カメラバッグ+樹脂リング+カラビナ+三脚ケース

 私は、今使っているGITZO製バッグを襷がけにした時に、バックの底面に三脚ケースがピッタリと密着するように樹脂リングとカラビナで調整した。これではバックを床面に置く時に困るのではないかとの意見もあろう。でもその際には、三脚ケースをカラビナから外すことなくバッグの手前側か上側に持ってくれば、安定した状態で床面に置ける。

樹脂リングとカラビナが付いたまま三脚ケースをバッグ手前に持ってきて床面に置いてみたところ。
樹脂リングとカラビナが付いたまま三脚ケースを
バッグ手前に持ってきて床面に置いてみたところ。
樹脂リングとカラビナが付いたまま三脚ケースを上に載せてバッグを床面に置いてみたところ。

お勧めのカラビナ: HEROCLIP

 100円ンショップ等で簡単に入手できる結束バンドで作った樹脂リングを活用しながら、Ulanzi Zero Yのメーカー純正三脚ケースを、メッセンジャータイプの各種ショルダーバックに簡単に取り付けてバッグと一体化させるのに近い買ってがよさそうなカラビナを紹介します。上の使用レポートでも実際に使っているのがHEROCLIP。カラビナの外周に沿うように折りたたまれたフックを開くと、カラビナ全長を上回る長さになる。今回、Ulanzi Zero Yをカメラケースに入れて手持ちのショルダーカメラバックに取り付けた際には、フックを開いて最長を生かせる形で樹脂リングに繋ぎました。三脚を取り付けない時は、フックを経たんでカラビナのサイズに戻してカメラバックの脇に付けたままにしてもよいし、バック内部に収納してもよく、使わない時にはコンパクトに収納出来るのがとても便利。

HEROCLIP
HEROCLIP

 HEROCLIPのフックの端部は少し深めの返しが付いているので、ここに三脚ケース端部のリングを引っかけるだけで、移動中に抜け落ちることなく三脚ケースをバッグに固定できる。ワンタッチで三脚の脱着が出来て非常に便利。

HEROCLIPのフック先端の返し
フック先端の返しを生かして三脚ケースの脱着をワンタッチで

 HEROCLIPは、360°回転出来るフックを生かして、普段の生活シーン、アウトドアなど、アイディア次第で色々と便利な使い方が出来るので、これを一つ二つ持っていると便利。一番よく使うのは、傘が倒れないように置ける場所がない時や床に直接バッグを置きたくない時にに即席のフックをテーブルに作ったりしています。あと、風景撮影に出掛けて地面が濡れていて直接カバンや三脚ケースを置けないときに木の太目の枝に引っかけたりしています。工夫次第で使い道は色々。