鍵善良房のくづ切り

鍵善良房本店

 平日は京都河原町駅または四条京阪駅を降りて、四条通り→花見小路→建仁寺と抜けて帰宅することが多い。鍵善良房さんの本店は、四条道りに面して花見小路の入口付近にあって、平日はいつもその前を通って帰っているのであるが、私が帰宅する時には、いつもすでに閉店されている。

 今年は、梅雨が短期間で終わってしまい、今日もすごく暑くなったので、家内と相談して、京都に引っ越して来て以来初めて鍵善良房さんに行ってみることにした。

鍵善良房本店

ひんやり美味しいくづきり

 今回はとても暑い日に初めてお伺いしたので、葛切りを頂いた。輪島塗の器の上側に黒蜜の入ったお椀が乗っていて、その下に氷入りの桶のような状態の器の中にくづきりが入っていた。今日のように最高に暑い日に行けてよかったのかもしれない。氷で十分に冷やされたくずきりは、本当に涼し気でツルンと喉越よく美味しく頂いた。

鍵善良房本店 くずきり

石川県輪島市との繋がり

 ネット検索してみたところ、このくづ切り用の輪島塗の器は、輪島の慶塚漆器工房が修理しているそうだ。私達のように鍵善良房さんのくづきりを食べたいと思ってやってくるお客はひっきりなし。毎日何度も使い回すうちに漆が痛んでくるのは当然のこと。定期的にこの工房に修理に出しているのだろう。石川県に生まれ、輪島には何度か訪れたことがある(昨年も行った)。家のすぐ近くで京都と石川のつながりを見つけられたことはちょっと嬉しい。

鍵善良房本店 くずきりの器(輪島塗)

河井寛次郎

 今住んでいる京都市東山区には河井寛次郎の家が、河井寛次郎記念館として残されている。民芸が大好きな家内と私は、河井寛次郎の作品が好きで、河井寛次郎記念館には幾度となく訪れている。河井寛次郎も鍵善良房さんの和菓子を好まれていたそうで、今日店内で見た壺のいくつかは、もしかして河井寛次郎作なのではないかと思うものがあった。

[nlink url=”https://minocame.com/kawaikanjirou-kinenkan-torasan-1797/” title=”河井寛次郎記念館” excerpt=”葵祭の日、あの寅さんも来ていた!” img=”https://minocame.com/wp/wp-content/uploads/2022/07/Kawaikanjiro250x253.jpg”]

干菓子の木型

 今日くずきりを頼んだら、最初にお茶と一緒に干菓子を出してくれた。菊寿糖というそうで、桜の木から作った木型に和三盆を詰めて作るのだそう。見た目がとても美しい。見た目だけではない。菊寿糖を口に含むと、和三盆独特の優しい甘さ口の中に広がる。しつこくないとても上品な甘さで、くずきりと合わせて楽しませて頂いた。

鍵善良房本店 菊寿糖

 私の両親は石川県金沢市の出身。特に母の実家は、金沢の和菓子の銘店、森八やその他銘菓を販売しているお店向けに和紙で作った紙器を製造して納品していた。その影響で、母の実家にはいつも買えばかなりよいお値段がする高級和菓子が一杯あって好きなだけ食べさせてくれた。今から考えるとなんとも贅沢な話だ。金沢の森八や諸江屋には伝統的な木型から作られた美しい落雁があるが、鍵善良房さんの干菓子も素晴らしく美しい。店先のショーケースの中に飾られている干菓子はどれも綺麗で見ていて飽きない。それらを作る木型も、きっと何世代も前からの木型もあると思われるが、鍵善良房本店の入口を入ったすぐ上の所にもズラッと木型が飾られている。金沢で子供のころから森八などで見せてもらったことがあったので、なんだか懐かしい気持ちになるのと同時に、そういった伝統的な木型を見せて頂けるだけでも楽しい気持ちになる。

鍵善良房本店 干菓子の木型

多彩な和菓子

 鍵善良房さんには、まだまだ色々な和菓子がある。家からも遠くない場所にあるので、季節ごとに折にふれてお店に行って、少しずつ鍵善良房さんの色々な味を楽しませてもらいたいと思っている。