昭和の金沢

 昨日のキャノンプレミアムアーカイブスは、木村恵一さんが金沢の町を撮り歩いておられた。木村さんがシャッターをきっていた場所のほとんどを、僕は訪れたことがある。木村さんが、金沢は細い路地裏がよいと仰っておられたが、同感だ。
 金沢の東山に、自由軒という洋食屋さんがあって、そのお隣に東湯という銭湯がある。その脇の細い路地から浅野川に抜ける細い路地が僕は好きだった。夏の暑い日に、普段住んでいた神奈川県から金沢に着くと、従兄弟たちと一緒に
 その路地を抜けて、釣り竿を持って浅野川に向かうときのワクワク・ドキドキした気持は、もう30年ほど前のことだが、今でも忘れることができず、ハッキリと覚えている。
 木村さんが訪れた場所で、
 「あぁ~、また金沢に行きたいなぁ」
 という気持ちに一番させられたのは、金沢の町並みを一望できる卯辰山だ。ここからの眺めは本当に素晴らしい。
 木村さんも感動されていたようだが、ここから見る漆黒の瓦屋根の家並は、本当に心が和む。大変残念なのは、浅野川沿いに背の高いマンションが出来てしまったことだ。私の子供のころは、なかった。マンション群の影響で、黒い瓦屋根の家並の美しさは半減してしまっている。私が子供のころには卯辰山には、何度も上った。幼稚園から小学校低学年の頃は、この山に上って、蝉をとったりクワガタを探し回った。亡くなった母方の祖父のお墓が卯辰山の墓地にあることもあって、何度となく訪れた。真冬に、雪が深々と降る中で、浅野川の大橋から眺める卯辰山の美しさも素晴らしい。

 東京駅傍の丸善で見つけた写真集がある。昭和の金沢という本だ。地元金沢の写真家の皆さんを中心に、写真の質の高さに驚いた。最近、この本を両親にプレゼントした。昭和30年代の写真も数多く、両親がまだ幼い頃の金沢の風景を多く見ることができると思ったからだ。実際、非常に喜んでくれたようだ。今度、金沢に行く時に持って行って、祖母に見せるというようなことを言っていた。確かに、金沢の家族や親戚と、昔話に花が咲くかもしれない。